こんにちは。72期の竹中です。前もって言っておきますが、僕は数学IIBまでしか履修せず、理科も基礎までしか勉強しなかった生粋の文系です。
そんな僕が担当する今回の「自宅で楽しむオモシロ知識」のテーマは、負の数同士の積がプラスになる理由です。
中学数学で負の数が登場して、さらには有理数、無理数、実数、そして高校数学では虚数、複素数という概念も登場しました。
中学のとき、マイナス✕マイナスがどうしてプラスになるのか詳しい説明をされなかったと思います。しかし、複素数の概念を使うと簡単にその理由がわかるのです。
今回は高校数学III(2020年度時点)で取り扱う「複素数平面」を用いて解説します。数学IIBまでしかやってない文系の皆さんのためにも丁寧に解説しますので、ぜひとも最後まで読んでください。理系の皆さんは複素数の解説を飛ばしてもらって構いません。
はじめに 複素数平面とは
複素数平面はガウスによって作られたため、ガウス平面とも呼ばれます。また、大学以降では複素平面と呼ばれることが多いそうです。今回は、「複素数」というワードを多く用いるため「ガウス平面」という呼称を使おうと思います。
ガウス平面では、x-y平面を用いて複素数を表すことができます。x軸を実軸(Real axis)、y軸を虚軸(Imaginary axis)として複素数a+biを表すのです。そして、複素数を平面で表すと原点からの距離を測ることができます。それが複素数の大きさ=絶対値です。三平方の定理で簡単に求まりますね。以下は今まで述べたことの具体例です。
極形式
座標平面上の点は、sin、cosを用いて表すことができますね。sin、cosを用いて表された複素数の式を極形式といい、z=r(cosθ+isinθ)と公式化されています(rを大きさとし、θを偏角(実軸との角度)とする)。数Iの三角比の応用ですね。
z=√3+iという複素数を用いて解説します。
この複素数zは、図に描いたらすぐに実軸との角度(偏角)が有名角のうちの1つとわかりますね。あとはもう簡単、横軸はcos、縦軸はsinを用いますが今回は複素数を表すのでsinの項にiをかけるのを忘れずに。
本題 負の数同士の積
さて、今まででガウス平面と極形式について説明しましたが、これらを駆使して負の数同士の積がどうしてプラスになるのか皆さんに理解してもらいましょう。
今回は単純に(-1)✕(-1)=1で説明します。まず、-1をガウス平面上で表しておきましょう。
はい、説明するまでもありませんね。
では、この-1を極形式で表してみてください。実軸との角度は…はい、πです。一応図示しておきます。
極形式で表すと、-1=cosπ+isinπになります。
では、極形式で表した-1同士を掛けてみましょう。
(-1)✕(-1)
=(cosπ+isinπ)・(cosπ+isinπ)
=cosπ・cosπ+cosπ・isinπ+isinπ・cosπ+isinπ・isinπ
=(cosπ・cosπ-sinπ・sinπ)+i(sinπ・cosπ+cosπ・sinπ)
この形、見覚えありませんか?そうです、加法定理・2倍角の公式です。
=cos2π+isin2π
=1
2πというのは一回転して0に戻ったということです。
さて、ここで複素数について噛み砕きたいと思います。
複素数a+biをガウス平面上で表すときには偏角が生まれます。
すると、このa+biを大きさと角度を持った数と考えることができます。
そして、複素数同士の積というのは、それぞれの複素数の大きさ(絶対値)の積と角度の和として捉えられます。「大きさがそれぞれの積であることはわかるけど、どうして角度は和なの?」と思う人もいると考えられますが、先程の(-1)✕(-1)の例で加法定理がでてきたことから、角度はそれぞれの和であると言えます。また、教科書上でも証明がなされています。
数研出版 改訂版高等学校数学III 15ページ
ここで、正の数について考えてみましょう。ガウス平面上では正の数は偏角が0になります。そして大きさは、当たり前ではありますが数字で表されています。正の数はどんなにかけても正の数であるのは、偏角の和が常に0であるからです。
一方で、負の数について考えると大きさは正の数と同じですが、偏角がπになります。負の数はかける項数に応じてプラスになったりマイナスになったりするのは、偏角がπと2π(=0)を行き来するからです。この偏角の行き来によって、負の数の積がプラスになったりマイナスになったりするのです。
負の数をπという角度を持った数として捉えることによって、負の数同士の積がどうしてプラスになるのかが理解できたと思います。
さて、ここまで僕なりに複素数平面(ガウス平面)を丁寧に解説してみましたがいかがだったでしょうか(わかりにくかったらごめんさない)。丁寧さを求めた結果このような文章量の多い記事になってしまったことを深く謝罪申し上げます。
また、以前Twitterにて誤字の指摘を受けました。今回の記事でも誤字脱字を見つけたら報告願います。
今回は理系的な内容に偏ってしまったため、次回の記事は文系的な記事にしようと思います。
それではまた次回。
丁寧に解説≠わかりやすい